- 2026.03.13 日常
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第3回「kimihiro’s Voice」【日常】
信州だから育てられる ― ロボット外科の次世代
日本はいま、大きな転換期にあります。
超高齢化、少子化、人口減少、災害、インフレ、地政学リスク。社会のあらゆる分野で「変革」が求められる時代です。医療も例外ではありません。とくに地方では、その影響がより強く現れています。人口減少と都市部への流出、そして急速な高齢化。長野県も例外ではありません。広い県土の中に都市が点在し、山脈によって地域が分断されるという地理的特徴の中で、これまで信州の外科医療は先達の先生方の献身によって支えられてきました。
しかし現在、外科医の多くはベテラン世代で、若手は減少しています。今後、従来の体制をそのまま維持することは難しくなる可能性があります。だからこそ、これまでの延長ではなく、本質を見極めた新しい外科教育と組織づくりが必要になります。
その取り組みの一つが、私たちが進めている
SING(Shinshu Surgery Initiative for the Next Generation) です。医学部生や研修医の外科教育を強化し、若手外科医を育てるための取り組みです。現実は決して簡単ではありません。若手医師の都会志向は強く、地方で外科医を増やすことは年々難しくなっています。
それでも「撒かない種は生えない」という信念のもと、地道な活動を続けることが大切だと考えています。
一方で、若い外科医が地方で成長するためには、最先端医療を学べる環境が欠かせません。信州大学では現在、
- da Vinci Xi:2台
- Saroa:1台
- hinotori:1台
合計 4台の手術支援ロボット体制 が整っています。
これは地方大学としては非常に恵まれた環境です。しかし私が最も大切だと思っているのは、機械の数ではありません。地方だからこそ、一人ひとりを丁寧に育てられることです。
信州大学の呼吸器外科学教室では、手術だけでなく Off-the-Jobトレーニング にも力を入れています。シミュレーションやトレーニングを通じて、若い外科医が安全に技術を身につけられる環境を整えています。地方の大学だからこそ、若手一人ひとりに目を配り、時間をかけて専門教育ができます。
さらに近年、AIの進歩は医療の世界にも大きな影響を与えています。しかし興味深いことに、米国のビジネス誌 Forbes では「AI時代でも最も代替されにくい医師の分野の1位が外科である」と紹介されています。理由は明確です。手術は単なる知識ではなく、経験、判断、そして繊細な手技が融合した医療だからです。
AIが進化する時代だからこそ、外科医の価値はむしろ高まります。
信州という地方から、ロボット外科の未来を担う外科医を育てる。それが、私たち信州大学 呼吸器外科学教室 の使命だと考えています。
Saroaでのロボット手術指導風景: オープンコンソールであり、術者と同じ視線で手術を学ぶことができる。
信州大学医学部附属病院 呼吸器外科
清水 公裕(文責:清水公裕)