真の低侵襲手術(痛くない、息苦しくならない手術)を
開発し、長野県の皆様の健康増進に尽力する
教授 清水公裕
私は令和元年(2019年)8月に信州大学に新設された呼吸器外科学分野の教授として赴任いたしました清水公裕と申します。この自然豊かで、歴史のある信州の地で、肺癌を中心とした外科治療を担い、新たな診断・治療法の開発を使命とする呼吸器外科教室を主宰できることに大きな喜びを感じるとともに大変「身の引き締まる思い」です。
私は、平成5年に群馬大学医学部第二外科講座に入局し、平成9年からは国立がんセンター研究所生物学部で肺癌の分子生物学的研究を行いました。平成12年からは国立がんセンター東病院呼吸器外科で肺癌の外科治療に従事し、その後は母校である群馬大学で、呼吸器外科の責任者として約15年間肺癌の外科診療に携わってまいりました。
私の専門は、肺癌に対する「真の低侵襲手術(痛くない、息苦しくならない手術)の開発」です。昨今、胸腔鏡やロボット支援下に傷を小さくすることが低侵襲であると言われることが多いですが、傷が小さく痛みが少ないだけでは、私は真の低侵襲手術では無いと思っています。特に肺癌は、喫煙者や高齢者など、肺の機能が弱い患者さんに多い病気ですので、肺癌を完全に切除しつつも、正常肺を可能な限り温存し、手術後に「息苦しくならない」ようにすることが重要です。そこで私は、胸腔鏡下に痛みを少なく、肺癌を必要最小限の範囲(肺の区域)で切除する「痛くない、息苦しくならない手術、胸腔鏡下区域切除」の開発とイノベーションを実践して参りました。私はこの分野において世界有数の手術数と実績を有しておりますが、今後は、この技術をロボット支援技術等と融合することで、より発展させ、長野県の皆様の健康増進に尽力して参ります。
また、国立がんセンター研究所で学んだ経験から、肺癌の分子生物学的データ(遺伝子診断結果等)をもとに、個人個人に合った治療を選択する個別化医療や、抗がん剤、分子標的治療、放射線治療と外科治療を組み合わせた集学的治療(特にサルベージ手術)を得意としております。これらの治療法は、特に進行肺癌や術後再発の治療に有効ですので、多くの患者さんに「信州大学に来れば治る」と希望を持っていただけるように、これらの先端医療を発展させ、積極的に実践していくつもりです。
私はこの信州大学においても、これまで通り「患者さん一人一人に寄り添い、決して外科医として根治をあきらめない姿勢」で診療に臨みたいと思っています。また、呼吸器外科教室としては「人の集う、若者の集う組織作り」をモットーに若手呼吸器外科医の育成と、長野県全体の呼吸器外科診療の質の向上に全力を尽くしたいと考えております。もとより浅学非才ではありますが、信州の皆様のご期待に沿うよう精一杯努力していくつもりですので、何とぞ宜しくお願い致します。