診療案内

肺の解剖と機能について

肺の解剖と機能(肺とは、縦隔とは?)

  • 胸部とは、頸とお腹の間の事を言います。胸部は大きく、肺と縦隔に分けることができます。
  • 肺は、12本の肋骨と横隔膜に囲まれた入れ物に入っており左右に分かれて存在します。
  • その左右の肺に囲まれた中心部分を縦隔と言います。縦隔には心臓、大血管、気管、食道など重要な臓器や器官が存在します。

肺の解剖(肺とはどんな臓器?)

  • 口や鼻から入った空気は、気管、さらに左右の気管支を通り、肺に入ります。肺の中で気管支は分岐を繰り返し、細気管支から最終的には肺胞という袋になります。
  • 一方で心臓からは、肺に肺動脈を通して血液が送り込まれ、肺胞の周囲で毛細血管の網目となり、そして、また集まり肺静脈を通って心臓に帰ります。
  • 右肺は上・中・下葉の3つに、左肺は上・下葉の2つの肺葉に分かれています。全体では、右肺が左肺より若干大きいのが一般的(6対4 or 5.5対4.5程度)です。
  • 肉眼的には識別は難しいですが、右肺はさらに10の区域、左肺は8つの区域という単位に分かれます。近年、区域という単位で肺を切除する区域切除が、早期肺がんに対して積極的に行われるようになってきました。

肺の区域解剖

右肺は3葉・左は2葉、さらに右肺は10区域、左肺は8区域に分けることができる

肺の機能(肺の仕組みと役割は?)

  • 肺は、口や鼻から吸った酸素を、気道(気管や気管支)を通して肺(肺胞)に充満させ、そこで心臓から送られてきた静脈血(体で酸素を使われた後の酸素が少なく二酸化炭素が多い血液)を動脈血(酸素が多く含まれて二酸化炭素が放出された血液)に変換します。
  • ちなみに、酸素と二酸化炭素の交換の事を呼吸と呼び、肺で行われている呼吸を外呼吸、体の隅々の細胞レベルで行われている呼吸を内呼吸と言います。肺は、この外呼吸を担当してる臓器です。
肺の仕組みと役割

喫煙と肺疾患の関係(タバコが肺にもたらす悪影響は?)

  • 喫煙は、肺にとって最悪の行為です。タバコのタールやニコチン、一酸化炭素は、肺胞を破壊し、気道に炎症をもたらします。また、発がん性物質であることが知られており、肺がんの発生や肺がんの悪性度と深くかかわっています。
  • 喫煙者の肺がんになりやすさは、非喫煙者の約4倍以上といわれております。
  • 受動喫煙も、喫煙と同様に肺がんのリスクになります。
  • さらに、肺がんばかりではなく、COPD、肺気腫や間質性肺炎の主な原因の一つであり、喫煙している人は肺炎や、風邪、インフルエンザにかかりやすいく、重症化もしやすいことが知られています。
喫煙が肺に及ぼす影響

禁煙の重要性(肺の手術とのかかわりは?)

  • 禁煙により、肺がんにかかるリスクは減少します。
  • 4週間の禁煙により、気管・気管支の繊毛の機能が回復し、排痰機能が改善すると言われています。
  • 喫煙者は、肺がんの術後合併症になるリスクが、非喫煙者に比べ6倍程度高いと言われていますが、禁煙によりリスクが下がります。
  • 逆に喫煙をしながら手術をすると、非喫煙者の手術の12倍合併症のリスクが高くなると言われています。(※1)

※1 Fukui et al. Ann Thorac Surg 2019;107:1005–10

上記の理由から当科では最低でも4週間の禁煙期間を置いてから手術を受けていただいております。

胸部の腫瘍(どんな腫瘍が発生するのか?)

  • 胸部は肺と縦隔からなります。
  • 肺の腫瘍には、肺や気管・気管支から発生する腫瘍(肺がん、カルチノイド、腺様嚢胞がん)と、肺を包んでいる胸膜から発生する胸膜腫瘍(胸膜中皮腫・孤立性線維腫症)があります。
  • また、肺には他のがんから肺に転移する転移性肺腫瘍があります。しかし、この腫瘍は肺に直接できるわけではなく、大腸や腎臓等、他の臓器にできたがん細胞が、血をめぐって肺に腫瘍を形成したものです。
  • 縦隔腫瘍は、縦隔という場所にできた腫瘍すべてを示す言葉です。
    縦隔腫瘍は、主に胸腺という組織から発生する腫瘍(胸腺腫、胸腺がん、胚細胞腫瘍)が多いですが、他にも神経やリンパ節などから発生する腫瘍(神経原生腫瘍・リンパ腫)もあり、発生する器官により名前が異なります。
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