お知らせ

2026.02.13 日常

第2回「kimihiro’s Voice」【日常】

~「背中を見て盗む」から「みんなで支える手術」へ~


プレスリリース 2026年2月13日

— 信州から始まる、やさしいロボット医療 —

本日(2026年2月13日)、信州大学医学部附属病院の手術室に、テレビ局4社(NHK、テレビ信州、長野朝日、信越放送)、新聞社2社(中日新聞、市民タイムス)、そして信州大学本部広報室の皆さんが集まりました。
手術室にこれほど多くのメディアが入ることは、決して日常ではありません。

取材のテーマは、 “触覚を持つ手術ロボット「Saroa(サロア)」”です。

 

なぜ、今ロボットなのか?

長野県は、日本一の平均寿命を誇ります。しかし同時に、高齢化が進み、多くの方が複数の疾患を抱えています。

高齢の肺がん患者さんにとって、「どれだけ肺を残せるか」「どれだけ体への負担を減らせるか」は、とても重要です。

私は長年、肺区域切除という“肺を温存する手術”に取り組んできました。
そこに新たな武器として加わったのが、国産ロボット「Saroa」です。

 

サロアの最大の特徴 ― “触覚” ―

これまでのロボット手術は、「見る」ことに優れていました。しかし、触る感覚はありませんでした。

サロアは、世界で初めて“力覚”を再現したロボットです。空気圧制御によって、まるで自分の指で組織に触れているかのような感覚を得ることができます。

これは何を意味するのか?

✔ 組織に余計な力をかけない
✔ 胸壁への負担が少ない
✔ 術後の痛みが軽くなる可能性
✔ 回復が早まる可能性

特に高齢患者さんにとって、この差は大きいのです。

 

「背中を見て盗む」から「大画面で共有する」時代へ

かつて外科医の修練は、“See One, Do One, Teach One”という、実際の手術現場で学ぶ時代でした。しかし、今は違います。

サロアは「オープンコンソール型」であり、手術前のシミュレーションが容易です。さらに、手術中も術者だけが没入するのではなく、大画面で全員が同じ視野を共有できます。一つの手術を通じて、複数の医師や学生が同時に学ぶことが可能です。

手術は“個人技”ではなく、チーム医療へ。
若い医師が安全に学び、看護師・麻酔科医・工学技師と一体となって支える。

これは単なる機械の進歩ではなく、教育と医療文化の変革です。

 

信州モデルの挑戦

今回の導入は、文部科学省の高度医療人材養成事業の一環でもあります。

若手医師の地方離れが進む中、「最先端設備を地方に置く」ことは未来への投資です。

また、「Saroa」は企業主導により、スターリンクを活用した遠隔手術の実証実験にも成功しています。このような技術発展は、将来的に長野県の雪深い山間地域へ高度医療を届ける可能性を示しています。

信州から世界へ。

これは決して大げさな言葉ではありません。

今日、多くの報道陣が集まったのは、単に新しいロボットだからではありません。

・地方大学病院の挑戦
・若手育成
・地域医療再生
・国産技術
・やさしい手術

これらが重なったからです。

手術は怖いもの。ロボットは冷たいもの。
そう思われがちですが、私はあえて言います。

「人に寄り添うロボット」を使っています。

 

未来は、想像よりも早く来る

生体肝移植を切り拓いたThomas E. Starzlは、こう述べています。

「昨日想像もつかなかったものが、今日ようやく可能になり、明日には当たり前になる。」

まさに今が、その瞬間です。

肺葉切除から区域切除へ。
開胸手術から胸腔鏡手術、そしてロボット手術へ。
ロボットも没入型から共有型へ。

信州大学呼吸器外科は、その変化をいち早く取り入れ、「痛くない」「息苦しくならない」肺がん手術を目指して進化を続けます。

 

最後に

今回の取材を通じて改めて感じたことがあります。医療は、閉じた世界で完結してはいけない。社会に伝え、理解していただき、共に未来をつくるものだということです。

これから毎月、この「kimihiro’s Voice」で、手術のこと、ロボットのこと、そして外科医としての夢をお届けします。

信州から、世界へ。
次回もどうぞご期待ください。

 

取材を終えた後の記念写真です。呼吸器外科の担当の看護師さんと、Saroaを開発したリバーフィールド社の皆さんです。今回はSaroaを一から開発した只野社長(白衣)も来てSaroaの機能について解説をしてくれました。「ありがとうございます」

 

 

(文責:清水公裕)

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