- 2025.12.23 日常
-
「理想の外科医を考える」【第20回コラム】
第20回コラム
記念すべき第20回目のコラムは、統括医長として当教室を支える久米田が担当いたします。
久米田は、日々の診療・手術・教育・教室運営のすべてにおいて中心的な役割を担い、上司からも部下からも厚い信頼を寄せられている、まさに当教室の要ともいえる存在です。
本コラムでは、そんな久米田が理想の外科医像を語り、また医局員の紹介もして頂きました。ぜひご一読ください。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「理想の外科医を考える」
最近はテレビドラマを見る機会も減りましたが、学生の頃は医療ドラマをよく見ていました。そこには“天才外科医”と呼ばれるキャラクターが数多く登場します。みなさんも思い浮かぶドラマや漫画の主人公が何人かいると思います。どんな難手術でも成功させる卓越した技術、決して迷わない圧倒的な自信と決断力、そして患者第一主義。自らを犠牲にしてでも患者を救う姿は、まさにヒーロー的な存在として描かれています。一方で、彼らは孤高で独善的、共感や謙虚さに欠けているにもかかわらず、その欠点がむしろカリスマとして魅力的に映るのも特徴でしょう。

とはいえ、現実の外科医像はドラマよりもずっと複雑です。実際の手術現場は、孤高の天才一人が成り立たせているわけではなく、多くの人々の協働によって支えられています。執刀医の他に数人の助手、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、放射線技師など、さまざまな専門職がチームとして動いています。外科医は“孤高の職人”というよりも、“チームの指揮者”であることが求められています。
近年の研究でも、優れた外科医に求められる性格、また手術手技以外の能力(ノンテクニカルスキル)は以下のようなことが挙げられています。
性格・・「誠実性」「協調性」「謙虚さ」「自己省察」「情熱と使命感」
ノンテクニカルスキル・・「状況把握」「意思決定」「コミュニケーション」「リーダーシップ」
このように、手術技術だけにとどまらないことが示されています。どんなに手先が器用でも、周囲と信頼関係を築けなければ良い結果は得られませんし、逆にミスが起きたときには「精神的回復力」も重要になります。過度な自信や完璧主義は時に判断を誤らせたり、自分を追い詰めてしまうリスクにもつながります。
また、「共感」や「人生の意味(meaning in life)」といった心理的な要素が、外科医の幸福感や職業的成熟に深く関係するという報告もあります。手術の腕を磨くことはもちろん大切ですが、それと同じくらい、自分を省みる姿勢や、医療の中にどんな価値を見出すかを考えることが、やはり重要なのでしょうか。
もっとも、これらすべてを完璧に備えた外科医はそう多くありません。理想の外科医像は人それぞれです。私自身も外科医として経験を積み、年齢も重ねるにつれ、若い頃とはまた少し違う視点で「どんな外科医でありたいか」「どのような医師人生を歩むのか」を考えるようになりました。まだまだ明確な答えが見つかりませんが、スタッフ紹介にもある「泰然自若」な外科医はひとつの目標としていきたいと思っています。
最後に、当科の外科医たちの人柄を、私なりの視点で少しご紹介して、このコラムを締めくくりたいと思います。

あくまで私個人の印象によるものですので、多少の違いや異論があってもご容赦ください。

清水教授:当科が誇る“スーパースター”。性格は「情熱的」。「探求心・向上心」をもち、強いリーダーシップと気さくさを兼ね備える。

濱中先生:“プリンス“。どんなときも「クール」で、感情をあらわにする姿を見たことがない。まさに泰然自若(見習いたい)。

寺田先生:“ジェントルマン”。性格は「温厚篤実」。患者さんだけでなく、上司や後輩からも信頼が厚い。当科をしっかり支える縁の下の力持ち。

中村先生:“オールラウンダー“。診療、教育、研究のどれをとっても高いレベルでこなす。仕事が早く、気配りも抜群。全体のバランスを見ながらスムーズに物事を進める手腕は、もはや職人技。

三島先生:“スマート“。博識であり、言語化能力にも長けている。複雑な内容もわかりやすく整理し、後輩への指導が的確。仕事もはやい。

勝野先生:待つより動く「行動派」。上司にも臆せず、女性の視点からも意見がいえる貴重な存在。教育担当で学生からも人気が高い。独特の感性で物事を語る一面もあり、場を和ませてくれる。

小口先生:おそらく「クール」を目指しているものと思われる。が、感情を隠しきれていないときも多少あり。秘めたる「情熱」をもち、次世代のエースとして期待される。
このように、個性豊かなスタッフがそれぞれの持ち味を生かしながら、日々診療にあたっています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。(文責:久米田浩孝/中村大輔)