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2024.10.02 日常

猫の手も借りたい日常【第14回コラム】

第14回コラム

 今回のコラムは、今年度から新たに大学病院に着任し、呼吸器外科医としてキャリアをスタートさせた勝野が、自己紹介?も兼ねて執筆しています。産休・育休を経て、子育てと呼吸器外科医の仕事を両立させている彼女の率直な気持ちが綴られています。ぜひご一読ください!

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「出産」という言葉の間違いに気づいたのは忘れもしない2022年12月のことです。コロナ禍にて、入院中の病院で医師として勤務していた夫ですら病室に入れてもらえず、実測96時間の陣痛に1人耐え忍び出産しました。私の周りの哺乳類の中で、群を抜く長丁場の出産となりました。「産み出す」と書いて出産ですが、そんな生ぬるい表現では、世間の人々に大きな誤解を与えてしまいます。正しくは「爆産」である、と私は思います。この男女の負担の不平等さを経験すると、オスを栄養にするメス蜘蛛の気持ちが非常によく分かります。

 

そんなこんなで、爆後1年半が過ぎ、娘もイヤイヤ期に突入いたしました。我が家は外科系夫婦であり、3人での生活には色々と工夫が必要です。早くから保育園デビューしてもらった負い目もあり、家にいる時間はできる限り娘の要望に応えられるよう生活をしています。授乳も、つい先日の「パイパイいらない」の衝撃発言までは、復職後も続けていました。(卒乳宣言後は娘が自立に向かっていく寂しさから、1週間ほど地に埋まるほどの悲しみに暮れていました。)

 

 保育園の遠足で作った夫婦合作キャラ弁

 

産前の私は、育児と仕事の両立に対しては正直少し自信がありました。体力や忍耐力にはそこそこ自信があり、実家も近く、夫も柔軟性があり、上手いことやってやろうと思っていました。ところが現状は、自分の要領の悪さに毎日頭の中で岡崎体育の「なにやってもあかんわ」が流れています。

 

もうなにをやってもあかんわ

もうなにをやってもな

もう一体全体なんなんだ

もういっそ一生寝たろかな

 

育児との両立が自分の努力や忍耐でなんとかなるジャンルではないことを痛感しております。

 

この夏は試練の夏でした。私は8月末の学会と外科専門医試験、夫は夏から秋にかけて、海外学会含めた4つの学会を控えていました。計画的に進めていたつもりでしたが、7月に保育園経由でR Sウイルス→ヘルパンギーナ→手足口病→コロナの順で流行感染症を家族でコンプリートし、多大なるご迷惑を職場にかけると共に、あらゆる計画が破綻しました。両立をする上で、最悪の事態に備えて、計画を立てることの必要性を学びました。

 

周りの先生にご配慮いただきながらも、進歩なき自分に様々な葛藤を感じる日々ではあります。どっちかに割り切ってしまった方が、健全だと思うことも多いです。ただ、患者さんにとっての女性外科医の需要は身をもって感じます。渦中の今は、自分の選択が正しいのか、正直自信を持って答えられませんが、私の好きな言葉に

It is better to act and repent than not to act and regret.

Niccolo Machiavelli

というものがあります。周りのお力を借りながら、少しでも外科医として挑戦、前進したいと思います。

 

 猫の手を借りる日常 -実家の老猫と愛娘-

 

 

 

(文責:勝野麻里)

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