特色
すべての肝不全患者さんに生きる希望を
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蓄積されたノウハウ
当科における肝移植は1990年の本邦3例目の生体肝移植から始まり、1993年には世界初の成人生体肝移植を、1999年には本邦初の脳死肝移植を成功させ、日本の移植医療を常にリードしてきました。
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甲信越地方で唯一の脳死肝移植認定施設
当院は全国で25施設しかない脳死肝移植認定施設です。そのため長野県のみならず近隣の県からも広く患者さんを受け入れています。地元の医療機関と連携し、遠方の患者さんでも安心できる医療体制を整えています。
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新たな挑戦 膵島移植
インスリンのみでは十分に血糖をコントロールすることができない、重症1型糖尿病の患者さん対して膵島移植による治療を始めました。
肝移植について
肝臓は非常に複雑な機能を持っているため機械での代替は難しく、肝臓本来の機能が低下していけば患者さんはいずれ死亡してしまいます。患者さんの機能を失ったあるいは低下した肝臓を健康な肝臓と交換することにより、患者さんの命を救う医療が『肝移植』です。
末期肝不全でベッドから起き上がれず、会話もできず、意識ももうろうとした患者さんが、移植手術によって、笑顔で、歩いて、退院されていく様子は、いつ見ても非常にドラマティックです。
肝移植の方法には大きく分けて2つの方法があります。
生体(部分)肝移植:近親者の自発的好意により、肝臓の一部を移植する方法
脳死肝移植:脳死者から提供された肝臓を移植する方法
それぞれの方法に利点と欠点がありますが、日本は脳死ドナーが少なく脳死肝移植の順番はなかなか回ってこないのが現状です。患者さんの全身状態や生体ドナー候補の有無などを総合的に判断し、適切な方法をご提案させていただきます。
入院期間は術前の全身状態に大きく左右されますが、小児で術後1~2ヶ月、成人で術後2~3ヶ月が目安です。
退院後は週1回の外来受診で肝機能などをチェックし、様子を見ながら徐々に受診間隔を延ばしていきます。
問題がなければ、復学や復職は早期から可能で、退院後約1年で受診間隔は2〜3ヶ月になります。
肝移植の対象
近年の保険適応拡大により、以前なら多額の費用が必要であった患者さんでも、保険診療内で肝移植を受けることができるようになりました(肝細胞がんなど一部の病気では保険で認められる範囲が限定されているものもあります)。
肝障害の程度を示す指標としてよく用いられるものにChild-Pugh分類とMELDスコアがあります。
お手元にあるご自身の検査データを参考に下記のサイトで値を入力していただくと、MELDスコアが計算できます。
http://reference.medscape.com/calculator/meld-score-end-stage-liver-disease
(Creatinine:クレアチニン(Cre)、Billirubin:(総)ビリルビン(T-Bil)、INR:プロトロンビン時間(PT-INR)、Hemodialysis〜:過去1週間で2回以上の血液透析を行ったか)
Child-Pugh分類でClass B~C、MELDスコア 15点以上が一般的に肝移植を考える目安といわれています。
しかし、実際にはこの他にも、肝障害の原因(原疾患)や全身状態、合併症の有無など様々な要因が関係してくるため、まずは移植医療センターまでお電話かメールでお気軽にご相談ください。
膵島移植について
膵臓には『膵島』と呼ばれる内分泌細胞の塊が散在しています。β細胞という、血糖が上昇した場合に血糖を低下させるホルモン、つまりインスリンを分泌する細胞もこの膵島の中にあります。
膵島を臓器提供者(ドナー)から頂いた膵臓から特殊な方法で取り出し、インスリンが分泌されない重度の1型糖尿病患者さんに移植することで、糖尿病の改善を目指す治療が『膵島移植』です。
受診の方法、お問い合わせ
劇症肝炎などの緊急を要する場合
当院への受診が難しい場合には往診も可能です。
転院搬送を含め早急に対応させていただきます。
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緊急時 医師専用
24時間ホットライン
通常のご紹介
初診時はスムーズな連携のため、医療関係者からのご連絡をお願いしています。
情報診療提供書のFAXをお願いする場合もあります。
外来予約センター
(受付時間 平日9:00 ~ 17:00)
移植の適応や費用などのお問い合わせ
(患者さん・ご家族・医療関係者)
些細なことでも結構ですのでお気軽にご相談ください。
お問い合わせの多い項目を「よくある質問」にまとめました。こちらもぜひご覧ください。
情報診療提供書のFAXをお願いする場合もあります。
よくあるご質問
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生体ドナーになるにはどうすればよいですか。
生体ドナーになるには健康であることが大前提ですが、その他にも様々な条件を満たす必要があります。生体ドナーになることをお考えの方は移植外来でさらに詳しい説明をさせていただきますので、ぜひ患者さんと一緒にご来院ください。
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肝移植を受けるには年齢制限がありますか。
当院では基本的に70歳以下の方を対象に肝移植を行なっています。肝移植には年齢以外にも様々な条件があります。
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肝移植の費用はどれぐらいかかりますか。
肝移植は多くの疾患で保険適応となっているため、健康保険を使って治療を受けることができます。保険適応外の疾患の場合はすべてが自費となるため1500万円〜3000万円程度かかります。健康保険以外にも高額療養制度のような様々な医療費支援制度が利用できる場合があります。
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使用できる福祉サービスについて教えて下さい。
肝移植後は身体障害者手帳一級が取得できます。この他にも様々な助成制度がありますが、お住まいの市町村により利用できるサービスが異なります。詳しくはお近くの行政窓口にお尋ねください。
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肝移植で起こる合併症について教えて下さい。
肝移植は通常の消化器の手術と比べ手術時間が長く、体全体にかかる負担も大きくなります。また、拒絶反応を抑えるために内服する免疫抑制剤による副作用があることも肝移植に特有です。具体的には、出血、拒絶反応、つなぎ合わせた血管などが詰まる、移植された肝臓が働かない、感染症、腎障害や糖尿病が悪化する、などがあります。しかし、すべての患者さんに合併症が起こるわけではなく、これらの中には起こる可能性が非常に稀なものも含まれます。詳しくは移植医療センターにお気軽にお問い合わせください。
診療実績
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
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生体肝移植 | 3 | 11 | 11 | 7 | 6 |
脳死肝移植 | 3 | 1 | 1 | 3 | 1 |
その他 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 |
合計 | 6 | 12 | 12 | 13 | 7 |