消化管疾患

胃がん

はじめに

『胃』とは食道と小腸の間にある袋状の組織で、食べ物を貯留し、胃液と混ぜ合わせて柔らかくし、徐々に小腸に送り込む役割をしています。

胃がんの主な原因は、ピロリ菌の感染、塩分の取りすぎ、喫煙、野菜果物の摂取不足がいわれています。胃がんの頻度(2016年のがん罹患数)は男性で第1位、女性では第3位で日本人に多いがんです。

2016年の罹患数

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1位 2位 3位 4位 5位
男性 前立腺 大腸 肝臓
女性 乳房 大腸 子宮
男女計 大腸 乳房 前立腺
  • 参考:[厚生労働省]全国がん登録罹患数・率

診断・治療の流れ

様々な検査結果を見て進行の程度を診断し、治療方針を決定します。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

直接、胃粘膜を観察します。異常な部位の細胞を採取して顕微鏡で確認し、がんを診断します。がんの広がりや深さを評価することもできます。

消化管造影検査(バリウム)

バリウムを飲み、レントゲンで胃の形を確認する検査です。胃の膨らみやすさ、通過障害、がんの広がりの評価にも有用です。

CT(コンピュータ断層撮影)・PET(陽電子放出断層撮影)検査

身体の内部の断面を観察できる検査です。造影剤など特別な薬を使うことで、がんの広がりや転移を診断することができます。

治療

胃がんの治療は、主に3つの方法があります。
信州大学では、消化器内科や腫瘍内科、放射線科と相談しながら、必要であればそれぞれの治療を組み合わせて患者さん一人一人にあった最適な治療を心がけています。

  • 内視鏡治療

    早期に発見され、転移のリスクが極めて低い場合には、胃カメラで切除することができます。

  • 手術

    胃と周りのリンパ節をまとめて切除します。がんの位置により、胃を切除する範囲が異なります。胃の下側にある場合には、胃を一部残す「幽門側胃切除術」が、上側にある場合には「胃全摘術」が行われます。早期がんで食道に近い位置にある場合には「噴門側胃切除術」を行うこともあります。
    いずれの術式も早期がんであれば積極的に腹腔鏡下手術を行なっています。
    進行がんの場合は、開腹手術と腹腔鏡下手術のどちらが良いかをその都度、慎重に検討して決定します。

    • 幽門側胃切除術

      幽門側胃切除術

    • 胃全摘術

      胃全摘術

    • 噴門側胃切除術

      噴門側胃切除術

  • 化学療法

    抗がん剤(注射または内服)によって、がんの増殖を抑えたり、死滅を期待する治療です。抗がん剤が血管に入って全身をめぐるため、手術不能なところまで広がった癌にも有効です。進行がんの場合には、再発を抑制するため、手術の前もしくは後に化学療法を行う場合があります(補助化学療法)。

入院スケジュール
(手術療法の場合)

基本的な入院スケジュールです。患者さんの状態に合わせて予定を変更することがあります。

退院後の生活

食事の取り方について

食事を溜めておく胃が小さくなったり無くなったりするため、一度に食べられる量が少なくなります。手術後半年~1年程度は1回の食事は少なく、回数を多くして食べましょう(分食)。また、小腸に急激に食事が流れ込むと、吐き気や腹痛、冷や汗が出たり、ぐったりしてしまうことがあります。これを『ダンピング症候群』と言います。ゆっくり良く噛んで食べることを心がけましょう。

腸閉塞

おなかが痛い、おなかが張る、吐き気がする、吐いたなどの症状が出たら、腸閉塞かもしれません。原因は傷口やおなかの中の傷に腸が癒着して、腸がつまってしまう(閉塞する)ことで起こります。また消化に悪いものを食べるとそれが詰まって腸閉塞になることがあります。注意が必要な食べ物を以下に挙げますが、これ以外の食べ物でも詰まることがありますし、逆に食べても大丈夫な方もいます。

  • キノコ類
  • わかめなどの海草類
  • イカ、貝
  • 繊維質の多い野菜(ごぼうなど)

原則として入院が必要です。治療は鼻から胃に管を入れたり、絶飲食、点滴が基本ですが、場合によっては緊急手術が必要になることがあります。

体力低下に気をつけましょう

手術後は体力や筋力が落ちてしまうことがあります。散歩する、ストレッチするなど適度に体を動かしましょう。

傷が痛い、傷から水が浸み出す

これらの症状が出たら傷口の感染(創感染)のことがあります。傷口を洗浄し、抗生剤を投与して治療します。

傷が膨らむ、傷口が開いた

一般的に退院する頃には傷はしっかり塞がっていますが、大きな力がかかると傷を縫った中の糸が切れることがあります。最悪の場合傷口が開いてしまうこともあります。中の糸が切れるとそこに腸がはまって傷口が膨らむ状態になることがあります(腹壁瘢痕ヘルニアと言います)。そのため術後1ヶ月程度は重いものを持ったり、激しい運動はしないようにしてください。

退院後の治療

通院について

退院後もがんの再発がないかを確認するために定期的に通院していただきます。血液検査、CT検査、胃カメラなどを行います。CT検査や胃カメラは半年から年に1回程度の間隔で調べることが多いです。一般的には術後5年間は通院していただきます。

退院した後に抗がん剤治療を行うことがあります

摘出した胃がんの顕微鏡検査(病理検査)の結果によっては、追加で抗がん剤治療をお勧めすることがあります。これを術後補助化学療法といいます。これは再発の可能性が高い方に再発の可能性を下げるために行います。内服薬のみの場合と内服薬と点滴を組み合わせる場合があります。薬の種類にもよりますが、半年から1年程度行うことが標準とされています。術後補助化学療法を行うかどうか、どの薬を使うかなどは患者さん一人一人と相談して決定していきます。

転移、再発が見つかった場合

通院して検査をしていく中で残念ながらがんの再発・転移が見つかることがあります。治療法としては抗がん剤治療(化学療法)が基本となりますが、再発・転移の状態によっては手術、放射線療法も適応となることがあります。どの治療法にするかは詳しい検査をして、患者さん一人一人と相談して決定していきます。腫瘍内科や放射線科とも連携して、どの治療法を選んだとしても質の高い医療をご提供します。

緩和ケアチームもサポートします

当院には緩和ケアチームがあり、がんによる痛みといった体の症状を和らげるだけでなく、不安なことについても相談することができます。当院では早い段階から緩和ケアチームと連携して、患者さんができるだけ今まで通りの生活を送れるように取り組んでいます。

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