乳腺疾患

乳がん

女性のがんの2割を
乳がんが占めています

乳がんは女性に発生するがんの中で最も頻度が高く、今や日本人女性の9人に1人が乳がんにかかると推定されています。年齢別にみると、発症頻度は30歳代から増え始め、40歳代後半でピークを迎え、最近は70歳以上でも増加しています。診断や治療の進歩により、乳がん患者さん全体での10年生存率は85%以上になっており、早期に発見できれば十分に完治が期待できる疾患になっています。

乳がんの症状

乳がんの主な症状は乳房のしこりや乳房の皮膚のくぼみ、乳頭からの分泌物やただれです。しこりがあっても痛みがないことが多いです。乳がんは乳腺組織を構成している「乳管」や「小葉」の上皮細胞と呼ばれる細胞が、がん化することで生じてきます。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」と呼び、がん細胞が乳管や小葉を包んでいる膜を破ってしまったものを「浸潤がん」と呼びます。浸潤がんになると、リンパや血液の流れに乗って転移を起こす可能性が出てきます。また、周りの脂肪や皮膚に入り込みながら大きくなっていくので、乳房の皮膚がくぼんだりしてくることもあります。しこりとして触ることができる乳がんは浸潤がんであることが多いです。非浸潤がんの場合、しこりを触れることは少ないですが、乳管の中にとどまっている乳がん組織から出血が起こり、乳頭から分泌物として出てくることがあり、それをきっかけにがんがみつかることがあります。

診断のための検査・診断

乳がんを見つけるためには、マンモグラフィ検査(図1-①)や超音波検査(図1-②)が役にたちます。これらの検査でしこりや異常が認められた場合は、皮膚の上から針を刺して組織を採取する針生検という検査を行い、採取した組織の顕微鏡の検査でその病変が乳がんかどうかを診断します。
乳がんには比較的おとなしい性質のものから、増殖がはやく活発なものまで、さまざまタイプの乳がんがあります。乳がんのタイプは、乳がん細胞が女性ホルモン(エストロゲン)の受け皿(エストロゲン受容体)と、がんの増殖能のめやすの一つであるHER2(ハーツー)というたんぱく質をもっているかどうかなどから決めます。針生検の検査でこれらも調べることができるため、乳がんかそうでないかの診断だけでなく、どのようなタイプの乳がんかも同時に診断することができます。針生検で乳がんの診断となった場合にはMRI検査(図1-③)を行い、乳房内での病変の広がりを診断します。また、CT検査などで肺、肝臓、骨といった臓器に転移がないかどうかを調べます。

<図1:乳がん患者さんの画像の検査>

①マンモグラフィ
②超音波検査
③MRI

乳がんの治療―
個別化が進んでいます

肺、肝臓、骨などの他の臓器に転移が認められない場合には、乳がんを完全に治すことを目的に、局所に対する治療と全身的な治療を組み合わせて治療を行います(図2)。局所に対する治療には手術と放射線治療があり、全身的治療はお薬による治療になります。浸潤がんの場合には、CTなどでの画像検査で病変が認められなくても、リンパや血液に乗って運ばれたがん細胞がからだのどこかに潜んでいる可能性があるため、手術や放射線治療だけではなく、お薬による全身的な治療が必要になります。
手術の方法は、検査で調べたしこりの大きさや場所と患者さんの希望を考慮にいれて、それぞれの患者さんに適した方法を決めていきます。しこりが小さい場合には乳房を残す乳房部分切除術(乳房温存手術)を選択することもできます。乳房部分切除を行なった場合には残った乳房にがんが再発するのを予防するために、放射線治療を行います。乳房全切除術を行う場合には、乳房再建手術を行うことも可能ですので、形成外科の先生とも相談し、手術の方法や時期を決定していきます。(病気の進行度によっては、乳房全切除を行った場合でも手術の後に放射線治療を行うことがあります)。
お薬による治療は、乳がんのタイプによって使うお薬が変わってきます。エストロゲン受容体をもっている乳がんはエストロゲンを餌(えさ)にして増える性質がありますので、エストロゲンの働きを抑えるお薬が有効です(ホルモン療法または内分泌療法と呼ばれます)。また、HER2(ハーツー)をもっている乳がんはHER2(ハーツー)を狙い撃ちするお薬(分子標的治療薬と呼ばれます)が効果を発揮します。エストロゲン受容体、もう一つの女性ホルモンの受容体であるプロゲステロン受容体、HER2(ハーツー)の3つ全てを持たない乳がんはトリプルネガティブ乳がんと呼ばれ、効果が期待できる治療薬は化学療法剤(一般的に抗がん剤と呼ばれる薬です)のみとなります。内臓や骨に転移が起こった場合には、病気の進行をおさえるためにお薬での治療を続けていくことになりますが、内分泌療法とあわせて使う分子標的治療薬や、遺伝が関係している乳がんにだけ使用できるお薬も開発され、再発したあとも長く治療を続けることができるようになっています。また、手術、放射線治療、薬物治療に次ぐ第4のがん治療として注目されている免疫チェックポイント阻害剤が、再発したトリプルネガティブ乳がんに対して使えるようになり効果が期待されています。

<図2:乳がんの治療>

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