教室案内

研究

研究について

乳腺内分泌外科では日々の診療だけでなく、研究機関である大学病院として、診療に関連した様々な臨床研究・基礎研究を積極的に行い、各方面の学会で発表したり、論文として投稿し、多くの業績をあげています。また学内、学外を問わず他の教室、施設との交流もさかんに行っています。

研究テーマご紹介

基礎研究

培養細胞、マウスを用いた実験や、患者さんから手術で切除した癌の組織を用いた免疫染色で乳癌、甲状腺癌の病態解明や、新規治療法開発を目指した研究

テーマ

トリプルネガティブ乳癌に対するエリブリンと他剤併用による新たな治療の開発

女性ホルモンの受容体であるエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、増殖因子受容体であるHER2のいずれも持たない乳癌は、トリプルネガティブ乳癌と呼ばれ、内分泌療法や抗HER2薬による分子標的治療の効果ができない上に、悪性度が高く、予後が不良の乳癌です。近年、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-L1抗体 (atezolizumab) の使用が可能になったものの、その効果は限定的で、トリプルネガティブ乳癌に対する新たな治療戦略の開発が求められています。
現在、乳癌治療で使用されているエリブリンは間葉上皮移行 (MET) 促進や腫瘍内血管のリモデリング作用を有し、これらの作用と通して、他の薬剤の効果を増強させる作用が期待されています。われわれはこれまでに、トリプルネガティブ乳癌に対して、エリブリンがMET誘導作用を介してパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強させること (Oncotarget, 2018)、HDAC6阻害剤とエリブリンの併用療法がチュブリンのアセチル化の誘導により相乗的な抗腫瘍効果をもたらすこと (Breast Cancer Res Treat, 2020) を報告し、エリブリンと他薬剤の併用の有用性を示しており、現在は抗PD-L1抗体との併用療法に関しても解析を進めています。

テーマ

腫瘍内局注療法を用いた新たな免疫療法の開発

従来、薬剤の投与方法として、体表の血管から薬剤を投与する経静脈的な全身投与が行われてきました。しかし、最近、腫瘍内に直接薬剤を注入するintratumoral approachが注目されています。特に免疫療法の領域では、intratumoral approachによって、直接薬剤が腫瘍内の免疫細胞に作用するため、全身投与と比べてより少ない投与量で、同等もしくはそれ以上の腫瘍内のリンパ球に作用する効果を誘導でき、さらに局所への投与となるため、全身的な有害事象が軽減できる可能性があります。このintratumoral approachを用いて、腫瘍内の樹状細胞を活性化させ、腫瘍免疫を誘導する治療方法を報告しており、現在も新たな治療方法の開発に取り組んでいます(Nat Commun, 2020)。

テーマ

原発性乳癌、および甲状腺癌の腫瘍内における免疫関連因子の発現と
予後との関連の解析

トリプルネガティブ乳癌に対して使用が可能となっている免疫チェックポイント阻害剤は腫瘍内の疲弊した腫瘍特異的T細胞の機能を回復させることで効果を発揮すると考えられているため、腫瘍に浸潤したT細胞 (Tumor infiltrating lymphocytes : TILs) の数が多いほどよりよい治療効果が得られると考えられています。しかし、近年TILsの「数」だけでなく、TILsのtypeや機能といったTILsの「質」が免疫チェックポイント阻害剤の効果と関連することが悪性黒色腫などで報告されてきています。そこで、乳癌、甲状腺癌の切除検体においてT細胞のtypeや機能に関する分子の発現を免疫染色により評価し、腫瘍内のTILsの「質」と予後との関連を解析しています。

臨床研究

実際の患者さんの血液検査や画像検査などのデータを用いて、治療後の予後や、治療効果の検討を行う研究

テーマ

乳癌患者における全身の栄養免疫状態と予後の解析

近年、癌患者における術前の全身の栄養免疫状態が、予後や周術期合併症の発症頻度に関連するという報告が散見され、栄養免疫状態を簡便に測定する指標として血液検査の結果から計測できるPrognostic nutrition index (PNI)、Neotrophil-to-Lymphocyte ratio (NRL) などが用いられています。しかし、乳癌患者において、化学療法開始時の患者の栄養免疫状態や化学療法中の栄養免疫状態の変化と予後との関連を明らかにした報告はこれまでにあまりありません。当科ではこれまでに、乳癌患者において、術前化学療法中のPNIの低下が予後と関連することを報告しています(BMC Cancer, 2020)。また、再発乳癌患者に対してエリブリンによる化学療法を施行する直前のPNIはNLRよりも治療後の予後を予測するよりよいマーカーとなることを報告しており(Anticancer Res, 2021)、現在も新たな予後を予測するマーカーを探索しています。

テーマ

甲状腺低分化癌の予後予測因子の探索

甲状腺低分化癌は、分化癌と未分化癌との中間的な形態像および生物学的態度、予後を示す組織型として確立されています。低分化癌による死亡は未分化癌以外の甲状腺癌死の大部分を占め、臨床的には重要な甲状腺癌です。しかしながら、頻度が稀であることから、その予後を予測する因子についての報告は少なく、当科では甲状腺低分化癌に対して手術を受けられた患者さんの予後を予測する因子を探索しています。

臨床研究へのご協力のお願い

より良い医療の実現のため、臨床研究へのご協力をお願いいたします

医学研究は基礎研究だけではなく、患者さんにご協力いただく臨床研究も必要不可欠です。臨床研究では患者さんから血液などの検体をいただく場合やカルテの情報を用いる場合があります。

このような患者さんを対象とする研究は、個人情報や人権が守られているか、研究を行うことで患者さんに不利益が及ばないかなどについて、学内の倫理委員会で公正な審査が行われます。
厳密な審査を通過し承認が得られた研究だけが行われるため、ご協力いただく患者さんへの負担は必要最小限です。現在の治療成績の向上のみならず、将来の医学の発展のためにも、臨床研究へのご協力をお願いいたします。
ご協力して頂ける患者さんには原則として研究内容についてご説明し、ご同意をいただいた上で研究に協力をしていただきます(患者さんが未成年の場合は親権者の方にご同意をいただきます)。

倫理委員会のホームページは下記リンクからご参照ください。

倫理委員会のホームページはこちら

臨床研究の情報公開について(オプトアウト)

ある種の研究(通常の検査や治療の際に余った検体を使用した研究や、診療の記録を調べる研究など)は、患者さんへの負担がないため、個別の説明や同意を省略させていただく場合があります。
そのような研究については院内の掲示板や倫理委員会のホームページで研究内容について公開しています(これをオプトアウトと言います)。
当教室で行っている研究のうち患者さんに個別に同意をいただく必要のないものは当院の倫理委員会のホームページから確認することができます。下記リンクをクリックしてください。

臨床研究にご協力いただける方へ

研究への参加拒否、同意撤回について

一度研究への参加を同意されたとしても、患者さんはいつでも同意を撤回することができます。同意を撤回したことで患者さんに不利益が生じることはありません。
また個別の説明や同意がなくても行える研究についても、参加拒否をすることができます。掲示板や当院のホームページを見て、ご自分が該当している研究、もしくは該当しているかもしれない研究があり、参加を拒否されたい場合には主治医にご相談いただくか、下記連絡先までお問い合わせください。その場合でも参加を拒否したことで患者さんに不利益が生じることはありません。ただし参加を拒否された時点で検体やデータがすでに研究に使用されて、匿名化されていた場合、データの完全な廃棄が行えないことがあります。

参加拒否、同意撤回される方はこちらまでご連絡ください。

信州大学医学部 外科学教室
乳腺内分泌外科学分野

  • TEL 0263-37-2654

E-Mail

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