特色
確かな技術で、
患者さんの未来と生活の質に配慮した
きめ細やかな治療を目指す
患者さんの未来と生活の質に配慮した治療
心臓や血管は、患者さんの命を支えるライフライン。だからこそ、ただ「治せばよい」のではなく、長期の機能温存を綿密に考えた手術が必要です。弁膜症疾患に対する弁形成術や、閉塞性動脈硬化症に対する長期機能保持を優先した血行再建術など、長期にわたって患者さんのQOLを維持する手術を目指しています。またお若い頃より複数回の手術が必要となる可能性のある結合組織疾患や先天性心疾患の患者さんと、ともに未来を見据えた治療を選択していきたいと考えています。
歳だから仕方ないとあきらめていませんか
近年、低侵襲治療の発達や治療成績の向上により、心臓血管外科の手術を受けられる患者さんの年齢は年々高齢化しています。長寿県である長野県の地域医療を担っている信州大学では、高齢者に対する心臓血管手術を特に多く手がけてきました。ステントグラフト内挿術など低侵襲治療の活用だけでなく、ご高齢の患者さんの肉体年齢を推測するバイオマーカーを活用し、暦年齢に惑わされない手術適応決定を心がけています。暦年齢が何歳であっても元気に人生を楽しみたいという思いは共通です。「もう歳だから」といったあきらめではなく、お一人お一人の人生に寄り添った治療選択を共に考えていきます。
地域最後の砦として
地域の中核病院として、重症心不全の患者さんや様々な合併症をお持ちの患者さんなど、一般病院では治療が困難な集約的治療を要する患者さんの積極的受け入れを行っています。また24時間365日緊急手術を行える体制を整えており、特に急性大動脈解離手術は全国でも有数で、良好な手術成績です。
当院で特に得意とする手術
セカンドオピニオンも随時受け付けております。
お気軽にご相談ください。
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低侵襲手術(MICS、TAVI)
患者さんごとにベストな選択を
大動脈疾患に対するステントグラフト治療など血管内治療、弁膜症疾患に対する小切開手術(MICS)、人工心肺を用いない心拍動下バイパス術(OPCAB)、経皮的大動脈弁置換術(TAVI)など、低侵襲治療が全国的にも増加傾向にあります。当院でもこれらの低侵襲治療を積極的に行っています。しかしこれら低侵襲治療はデメリットもあり、それぞれの特色を熟知したうえで選択することが重要です。低侵襲だから、と一義的に選択するのではなく、患者さんお一人お一人のバックグラウンドに合わせた選択肢をご提供し、一緒に考える治療法選択を行っています。治療法選択でお悩みの患者さんのセカンドオピニオンにも対応いたします。
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広範囲大動脈手術
様々な手術方法を組み合わせてより低侵襲に
広範囲大動脈の置換は手術難易度が高く、下半身麻痺や脳梗塞、出血合併症のリスクが高くなるため、分割手術やアプローチ法・循環補助手段の工夫、血管内治療との複合手術の導入など、手術戦略が極めて重要です。特に解離性大動脈瘤や結合組織疾患をお持ちの患者さんにおいては、複数回の手術が必要となることもあり、長期成績を見据えた治療計画が患者さんの一生を左右するといっても過言ではありません。当院ではお一人お一人の動脈の形態にあわせた手術戦略をたて、少しでもリスクの低い手術をご提供するべく努力しています。
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再手術
何度目でも「諦めない」をモットーに
過去に手術を行った部位に再度手術を行うことを再手術といいます。初回手術と比べ再手術では、周囲組織との癒着(傷が治る際に組織どうしがくっついてしまうこと)を剥離する作業が必要となるため、初回に比べ難易度が上がるとされています。当院では、県内各地から再手術の患者様のご紹介をいただき、これまで多くの再手術症例を経験してまいりました。剥離方法やアプローチ法の工夫により初回手術とほぼ変わらない成績をご提供するべく努力を重ねています。人工血管感染や人工弁感染といった人工物感染手術では、感染再発を予防する手術方法や食道・気管・腸といった周囲臓器のケアも重要ですが、当院では消化器外科や呼吸器外科、形成外科など複数科との連携によって感染再発を防ぐ手術戦略を考えています。ステントグラフト留置術後のエンドリークへの対処の経験も豊富で、「諦めない」をモットーに全県からのご紹介に対応しています。
対象疾患
虚血性心疾患
(狭心症・心筋梗塞など)
動脈硬化や血栓などで心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血流の流れが悪くなると、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなります。心筋が酸欠状態となり胸痛などの症状がでる「狭心症」や心筋が壊死に陥る「心筋梗塞」があります。カテーテルによる血管内治療や冠動脈バイパス術が行われます。どの治療が最適かは、患者さんの状態によって異なり、当院では循環器内科と相談の上、患者さんに最適な治療法を考えていきます。冠動脈バイパス術を行う場合、人工心肺を用いずに行う心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を第1選択としており、脳梗塞などの手術合併症を減らす努力をしています。
弁膜症疾患
(大動脈弁閉鎖不全症・大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症・
感染性心内膜炎など)
心臓の中にある一方通行の扉を「弁」と呼びますが、この弁が「閉まらない(閉鎖不全症)」「開かない(狭窄症)」といった状態に陥る病気です。外科的には弁を修理する(形成術)、あるいは人工弁に取り替える(置換術)といった方法がとられます。当院では、弁形成術をできる限り第1選択とすることで、患者さんのQOL維持に努めています。またカテーテルによる大動脈弁置換術(TAVI)も、循環器内科と協力しながら積極的に行っています。感染性心内膜炎はこの弁に感染をおこし、弁破壊や敗血症(血液内で細菌が増殖している状態)が引き起こされる病気で、場合によっては致命的となるため緊急手術が必要となることもあります。
大血管疾患
(大動脈瘤・大動脈解離など)
大動脈が瘤状に拡張した状態を大動脈瘤、大動脈の内膜に亀裂が壁内に血流が入りこんだ状態を大動脈解離とよびます。いずれも放置すると破裂する可能性があるため専門医による診断が必要です。当院では標準的治療である人工血管置換術の他、低侵襲治療であるステントグラフト内挿術、両者を組み合わせたハイブリッド治療を、患者さんの状態にあわせ選択しています。急性大動脈解離は場合によっては突然死する可能性のある病気ですが、当院では24時間緊急手術をできる体制を整えており、全県からの搬送に昼夜を問わず対応しています。
重症心不全
県内最後の砦として、全県から重症心不全患者さんのご紹介をいただき、循環器内科とともにハートチームとして治療にあたっています。劇症型心筋炎をはじめとした重症急性心不全に対する改良型補助心肺装置(CentaralECMO)の装着例では約80%が離脱、自宅退院を果たしており全国的にみても良好な成績です。また移植適応のある重症心不全の患者さんに対する植込み型左心補助人工心臓(LVAD)の植込み実施施設でもあります。
成人先天性心疾患
生まれながらの心臓病を「先天性心疾患」といいますが、当院では大人になった先天性心疾患の患者さんの手術・再手術を、県立こども病院や循環器内科のご協力のもと行っています。
末梢血管疾患
足の血管が動脈硬化によって狭くなる「閉塞性動脈硬化症」をはじめとした末梢血管疾患では、内服治療・運動療法から血管内治療、手術、と治療方法の選択肢が多岐にわたります。狭心症や脳梗塞といった重要臓器の合併症を抱えている患者さんも多く、全身状態やQOLを考慮した治療戦略が必要です。
下肢のしびれ・むくみ・冷え・だるさ
(下肢静脈瘤・リンパ浮腫など)
下肢のしびれ・むくみ・だるさ・冷え、いずれも自覚していない高齢者はむしろ珍しいのではないでしょうか。これらの症状は日常生活を不快にし活動度を下げる大きな要因であり、また他の重大な疾患の症状である可能性があるにもかかわらず、「高齢になれば当たり前のこと」として我慢されてしまっている方が少なくありません。上述の閉塞性動脈硬化症のほかにも、下肢静脈瘤による静脈うっ滞、リンパ浮腫といった局所の障害から、膠原病、心不全、腎不全など全身の病気のスクリーニングまで、「足を窓口に全身を診る」をモットーに治療を行っています。下肢静脈瘤については日帰りレーザー治療にも対応しますのでぜひお問い合わせ下さい。
手術実績
2018 | 2019 | 2020 | |
---|---|---|---|
心臓大血管手術 合計 | 269 | 260 | 275 |
胸部大動脈手術 | 161 | 111 | 131 |
急性大動脈解離による緊急手術 | 51 | 48 | 41 |
急性大動脈解離による緊急手術 | 51 | 48 | 41 |
急性大動脈解離による緊急手術 | 51 | 48 | 41 |
大動脈基部置換術(含自己弁温存基部置換術) | 10 | 25 | 18 |
上行~弓部置換術 | 88 | 65 | 66 |
下行・胸腹部置換術 | 26 | 15 | 14 |
上行~弓部~下行大動脈置換術 | 1 | 3 | 12 |
胸部ステントグラフト内挿術 | 15 | 10 | 24 |
弁膜症手術(弁置換術・弁形成術) | 95 | 106 | 132 |
単弁手術 | 52 | 46 | 61 |
複合弁膜症手術 | 36 | 27 | 27 |
経皮的大動脈弁置換術(TAVI) | 7 | 33 | 44 |
虚血性心疾患手術 | 58 | 63 | 54 |
心拍動下冠動脈バイパス術 | 18 | 23 | 18 |
心停止下冠動脈バイパス術 | 1 | 1 | 0 |
人工心肺下冠動脈バイパス術(他手術との併施手術) | 35 | 36(29) | 33(29) |
心筋梗塞合併症手術(心室中隔穿孔・自由壁破裂) | 4 | 3 | 4 |
先天性心疾患 | 4 | 11 | 11 |
重症心不全 | 13 | 7 | 15 |
植え込み型VAD | 3 | 6 | 6 |
体外型VAD | 3 | 0 | 0 |
Central ECMO | 7 | 1 | 9 |
その他の開心術(収縮性心膜炎・心臓腫瘍・肺血栓塞栓症) | 16 | 18 | 29 |
2018 | 2019 | 2020 | |
---|---|---|---|
腹部末梢血管手術 合計 | 169 | 172 | 218 |
腹部大動脈手術 | 91 | 87 | 128 |
腹部大動脈人工血管置換術(含ステントグラフト留置後開腹手術) | 57 | 72 | 85 |
腹部ステントグラフト留置術 | 34 | 25 | 45 |
下肢動脈バイパス術・血栓内膜摘除術 | 11 | 13 | 15 |
急性動脈閉塞手術 | 11 | 17 | 16 |
下肢静脈瘤手術 | - | 19 | 17 |
その他(内臓動脈瘤手術など) | 45 | 20 | 8 |
その他の血管内治療(経皮的血管拡張術・経皮的血管塞栓術等) | 11 | 7 | 12 |
※内訳は複合手術を含みます。合計(青字)は重複カウントはありません。