特色
乳がん患者さんに治療の進歩と希望を
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治療の意義を知るスペシャリストとして
乳がんでは、20年以上も前から数多くの臨床試験が行われ、Precision Medicine~患者個人レベルで最適な治療を施す~の礎が構築されてきました。私たちは乳がんにおける個々の治療の意義を知るスペシャリストとして患者さんとともに歩みます。
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さまざまな分野との質の高いコラボレーション
乳がん診療は、放射線治療、乳房再建、遺伝子診療など、さまざまな分野とのコラボレーションを必要とします。当院にはすべての分野でプロフェッショナルが揃っています。精度の高い手術だけでなく、質の高い集学的診療・治療を目指しています。
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患者さんと意思の共有を
乳がんは手術と薬による治療で治癒を目指す病気ですが、薬の治療を長く要することも少なくありません。私たちはチームとして、患者さんの目標と意思を共有し治療を支える、Shared decision makingを実践します。
対象疾患
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乳がん
11人に1人がなるといわれる乳がん。手術と薬物治療、放射線治療で根治を目指す腫瘍です。腫瘍の大きさや腋窩リンパ節転移の有無などだけでなく、いわゆる、サブタイプといわれる4つのタイプによって、個々の患者さんで治療方針は大きく異なります。
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良性乳腺腫瘍
最も多いのが線維腺腫です。しかし、悪性の要素を持ちうる葉状腫瘍と非常によく似ているため注意を要する腫瘍です。他に、血性乳頭分泌で診断に至る乳管内乳頭腫があり、がんとの鑑別を要します。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群
(HBOC:hereditary breast and ovarian cancer syndrome)
BRCA1、もしくはBRCA2 (BRCA1/2 )とよばれる遺伝子に、 生まれつきがんになりやすいという特徴(病的バリアントまたは変異といいます)を持っていると、乳がん、卵巣がんにかかりやすいことが知られており、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とよばれています。
HBOCの患者さんには、1)卵巣がんを発症しやすい、2)若い年齢で乳がんを発症しやすい、3)両側の乳房に乳がんができやすい、4)男性でも乳がんを発症する可能性が高くなる、5)BRCA1遺伝子が原因の場合はトリプルネガティブ乳がんというタイプの乳がんにかかりやすい。といった特徴があります。
最近ではBRCA遺伝子に異常がある患者さんにのみ効果が期待できるPARP阻害剤というお薬も再発乳がんの治療に使えるようになってきております。BRCA遺伝子に異常があるかどうかを調べることが可能になってきていますが、もし異常が見つかった場合には、血のつながった家族にも異常がある可能性があるために 、しっかりと検査の意義や弊害を理解したうえで、検査を受けていただく必要があります。当院では遺伝子診療部と連携して、BRCA遺伝子の検査を行っています。
2020年にBRCA遺伝子に変異がある患者さんにおいては乳がんが発生していない乳房を予防的に切除する手術が(risk reducing mastectomy: RRM)保険収載され、当科でも行っております。
乳房再建
乳がんと診断され腫瘍の範囲が広い、あるいは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群であることなどを理由に乳房全摘を必要とする患者さんで、乳房再建の適応があり、かつ希望される場合には、形成外科と連携し乳房再建にも取り組んでいます。
乳房再建の際は、乳房切除と同時に、形成外科の先生方に組織拡張器(いわゆる、生理食塩水バック)を留置していただきます。その後、ご自身の組織(皮弁)を用いた再建か、あるいは人工物(シリコンインプラント)を用いた再建のいずれを選択するか、形成外科医と十分に相談していただき、約6カ月後に再建する順序で行っています。