患者さんのために
最善を尽くし、
世界への知見の発信を
目指します
From Shinshu
to the World!
皆様こんにちは。信州大学医学部外科学教室 乳腺内分泌外科学分野で教授を務めております伊藤研一と申します。当ホームページをご覧頂き御礼申し上げます。
信州大学医学部外科学教室は、昭和20(1945)年に星子直行教授が着任され外科学第一講座が、続いて昭和24(1949)年に丸田公雄教授が着任され外科学第二講座が開講し、以後70年以上にわたり発展してまいりました。そして、令和元(2019)年10月に、消化器・移植・小児外科学分野、心臓血管外科学分野、呼吸器外科学分野、乳腺内分泌外科学分野の4分野からなる「信州大学医学部外科学教室」となり、新たな体制で診療、研究、教育を開始しております。
私たち乳腺内分泌外科学分野では、甲状腺がん、乳がんを中心に、甲状腺、副甲状腺、乳腺の疾患を総合的に診療しています。当科の柱の一つである甲状腺がんの診療は高度な専門性が要求される分野ですが、多数例の集学的な診療を行なっている大学病院は多くはありません。当科は教室開講以来甲状腺疾患を専門に扱っており、長い歴史の中で培われた豊富な経験に基づき、合併症の少ない手術を実践しており、局所進行症例に対しても治癒を目指した拡大手術に取り組んでおります。また、腫瘍の中で最も悪性度が高いにも関わらず、未だに有効な治療法が確立されていない甲状腺未分化がんに対しても治療成績の改善を目指して、がんの遺伝子解析も加えた集学的治療を積極的に行っています。
当科のもう一つの柱である乳がんは、現在日本女性の9人に1人が罹患する疾患になっており、非常にニーズの高い分野です。乳がんでは外科治療、薬物療法ともに多様化と個別化が進んでおり、高度な専門性と的確な診断技術が要求されます。乳がんは化学療法剤、内分泌療法剤、および分子標的治療薬に加え、免疫チェックポイント阻害剤も臨床応用され、全身的薬物療法の多用化と「治療の個別化(personalized medicine)」が進んでいます。当科でも、個々の患者さんに最も適した治療を行うことを目指し、整容性を考慮した乳がんの外科治療と、術前術後、再発後の薬物療法に取り組んでおります。多くのがんで「標準的治療」が普及してきておりますが、残念ながら「標準的治療」を行なっても再発してしまうことはまれではありません。私は腫瘍専門医の力量が問われるのは、再発または進行したがんを有する患者さんに、どの様な治療を提示し実践できるかというところにあると考えています。治療方針を決めることが難しい場合もありますが、当科ではチームで検討し、それぞれの患者さんに最善と考えられる治療を提供できるように努めています。しかし、患者さんと一緒に努力しても、現在可能な治療ではがんの進行を制御できない場合もあります。現在のがん治療の限界を克服するためには、“がんの本質”を知ることが重要です。今後数年の間にがんゲノム診断に基づく腫瘍の分類が急速に進み、個々の患者さんの腫瘍の遺伝子の情報に基づくがんの個別化治療(Precision cancer medicine)が推進されていくと考えられ、分子生物学的な腫瘍の理解がますます重要になっております。
以前から当科では腫瘍の基礎医学的研究にも力を入れておりますが、私は研究を通して得た知識が臨床で役に立つだけでなく、研究を遂行する中で培われた考え方が生涯役立ち、医師として研鑽を重ねる上での糧になると考えております。このような理由から、若い時期に研究にも取り組む時間を持ってもらい、臨床で経験される疑問や問題点の解決に向かって科学的に行動できる “Surgeon scientist” の育成に努めております。当科では、分子生物学的手法を用いて乳がんや甲状腺がんの悪性度に関与する因子や、抗がん剤が効かなくなる機序(薬剤耐性機構)の解明に取り組んでおり、新規治療戦略を開発することを目指して、「信州から世界へ! (From Shinshu to the world)」を合い言葉に、世界に新しい知見を発信すべく研究を行っています。
一方、臨床医学は一人として同じではないそれぞれの個性をもった人を対象とする科学です。私も今なお毎日患者さんから多くのことを学んでおりますが、優れた技術と科学的思考力に加えて、何よりも患者さんを第一に考えるhumanityを有する“Surgeon scientist” の育成を目指しております。
私たち乳腺内分泌外科学分野では、診療では地域に世界標準の医療を提供し、患者さん中心の全人的な医療を遂行することを最大の目標としています。そして、臨床および研究で得られた知見を信州から世界に向けて発信して行けるように、スタッフ一同で努力して行きたいと思います。乳がんや甲状腺がんに興味のある方はもちろん、悪性腫瘍の臨床や研究に関心のある方は、是非気軽に当科にご連絡ください。今後とも宜しくお願い申し上げます。
教授 伊藤研一